2000.2.21 中日新聞 静岡特報掲載 リスク覚悟、強気の経営(月曜インタビュー)
インターネット関連のIT(インフォメーションテクノロジー=情報技術)事業を成長戦略として位置付ける企業が増えている中、スプリングメーカーの鈴木スプリング製作所(浜松市西島町)が、音声版電子メール「ボイスメール」のプロバイダサービスに本格的に乗り出した。21世紀を生き残るには、経営のスピード化がキーポイント。その中でボイスメールはビジネスコミュニケーションツールとして必ず拡大すると話す、鈴木貞男社長に聞いた。(聞き手・赤野嘉春)

 双方とも長所短所があり、ビジネスに応じた使い分けが必要で、パソコンなどを利用する
Eメールは、大量の情報を蓄積・検索でき記録性の高い点など利点はあるが、アクセス時間が掛かり機動力に欠けるほか、コスト高といった難点がある。半面、ボイスメールは電話さえあれば利用でき、パソコンアレルギーの人が多い中、簡単でスピーディーに情報を伝えることができる。肉声が流れるため、緊急かそうでない時の違いもニュアンスで伝えられる。わが社では三年前から導入しているが、通信費のコスト削減はもちろん電話取り次ぎ業務の効率化が図れたほか、顧客クレームなどにすばやく対応でき、高い信頼性を得ることができた。


Q.プロバイダーサービスまで幅を広げたのは

A.
21世紀を生き残るには、社内の風通しを良くして経営のスピード化を高める業務改善が必要。そのためのコミュニケーションツールの一つがボイスメール。米国のトップ企業五百社のうち八十四パーセントが導入していることから見ても業績向上を図るツールとして拡大するはず。国内では三百人規模の企業で約五パーセントが利用しているが、二年以内には十パーセント台になるといわれている。Eメールの普及率をみても、そこから加速的に伸びるのでは。九日、浜松市内で開いたセミナーには、製造業や飲食、コンピューターソフトなど予想を上回る七十三社が参加した。依然として景気の低迷が続く中、業務改善の手段として期待している証拠。年末までに、サービス提供先を四十社から百五十社に拡大。五年後を目途に、売り上げ規模で十億円を目指す。


Q.本業のスプリング部門の現状は?

A.自動車販売台数の減少を見ても分かるように、業界は縮小傾向にある。わが社も三年前のピークに比べ、売り上げは一億円減の九億円だが、固定費に占める人件費を二十五パーセント減少させるなどして、粗利益は三.五ポイント上向いている。また、利益重視の体質に持っていくためにここ数年、経営の合理化を積極的に実施、売上に占める設備投資も、五パーセントから十パーセント程度と、生産効率を高めている。


Q.トップとしての経営方針を


A.
ここ数年、同業種で淘汰される企業も目立つようになり、パイの奪い合いといった状況で、生き残りをかけた選別の時代。このタイミングを乗り越えれば自然と勝ち組になる。もうかるシステムを構築し、経営改善を推し進めて、競争力を高めることが必要だ。社員にも、毎月の売り上げや利益計画を表したポッケトサイズの経営計画書を配布しているほか、頻繁に勉強会に参加させて、感覚的に経営に参加させてレベルアップを図っている。低迷気味の時代だからこそ、やり方次第でビジネスチャンスはある。ある程度のリスクを覚悟して、つまづいたら軌道修正するといった強気の経営が必要だと思う。

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